AMDの四半期決算が予想を上回り大幅上昇した一方、本日Armの四半期決算は予想を上回ったものの、取引終了後には大幅下落した。その理由を詳しく見てみると、需要は強いが供給が弱く、実現が遅れているという点に集約される。 1. 最新四半期の売上高は前年同期比20.2%増の14.9億ドル、調整後EPSは0.60ドルと、いずれも予想を上回った。次四半期の売上高予想は約12.9億ドル、調整後EPSは0.36~0.44ドルの範囲と、いずれも前回予想を上回っている。売上と利益の面では問題ないように見える。 2. 業務別内訳を見てみよう。 1)ライセンス収益は大幅に予想を上回り、8.19億ドル(前年同期比29%増)となり、アナリスト予想の7.81億ドルを大きく上回った。同社はその要因として、次世代チップアーキテクチャに対する需要の高まりと、顧客との深度な戦略的協力関係を挙げている。 これに対し、ロイヤリティ収益はやや弱めだった。Armのロイヤリティ収益は6.71億ドル(前年同期比11%増)だが、市場予想の約6.90~6.93億ドルを下回った。ロイヤリティが予想を下回ることは、主にエンドマーケットの出荷が堅調でないことを示す。同社はこの主な要因としてスマートフォン市場を挙げている。 2)ここでArmのビジネスモデルを理解する必要がある。 ライセンス収益とは、一括または分割で前払いされる「フロントエンド料金」(upfront fee)である。顧客(クアルコム、アップル、NVIDIAなど)は数百万~数千万ドルを支払い、ArmのIP設計ファイル、使用権、技術サポートを得る。この費用は即時収入として計上され、顧客がArmアーキテクチャに今後どれだけコミットし、どのような製品計画を持っているかを反映する。ライセンス契約後、顧客はようやくArm IPを基に自社チップの設計を開始できる。 その後、チップ1個あたりの「継続的収益」(recurring fee)が発生する。通常はチップの平均販売価格(ASP)の1~2%(高機能アーキテクチャ如Armv9やCSSではさらに高くなる)または固定単価で課金される。チップは設計完了→試作→量産→実際の出荷まで通常2~3年(場合によってはそれ以上)のタイムラグがある。この収益は長期的に継続的に発生し、チップが販売され続ける限りArmは継続的に収益を得る。 つまり、ライセンス収益とロイヤリティ収益は完全に独立した2つの課金項目である:ライセンスは「設計図・参入権の購入」、ロイヤリティは「販売台数に応じた利益配分」である。顧客は両方を支払わなければ、合法的にArm IPを使用してチップを製造・販売することはできない。 したがって、この論理関係は以下の通り: 大規模なライセンス契約 → 顧客が今後数年間Armベースチップを量産するとコミットしたことを意味する → 2~3年後にロイヤリティ収益が大幅に実現する。 したがって、ライセンス収益が大幅に増加していることは、大手顧客がArmエコシステムへの投資を拡大し続けていることを示している。 3)今回の決算から見えてくるビジネスモデルの変化 かつてArmではロイヤリティ収益が5~6割、ライセンス収益が3~4割を占めていたが、最新の決算では逆転し、ライセンス収益がロイヤリティ収益を大きく上回っている。 この変化は何を意味するのか? スマートフォン市場の低迷によりロイヤリティ収益が弱い一方で、直近四半期における下流顧客による新しいArm IPライセンスの需要は大幅に増加している。このライセンス需要の大半はAI CPU向けであると推測される。つまり、今後これらの顧客がチップを出荷し始めたとき、Armのロイヤリティ収益は増加する見込みである。 ライセンス収益の大幅増加は、大手顧客がArmエコシステムへの投資を拡大し続けていることを示している。 3. 市場が最も関心を持つArm自社開発のAGI CPUについて 経営陣は、AIデータセンターにおける高効率CPU設計への需要が継続的に高まっており、これがスマートフォン市場の短期的な圧力を相殺していると指摘した。また同社は、AGI CPU製品について2027~2028会計年度における顧客需要が20億ドルを超えたことを明かした。 3月にArmが自社開発のAGI CPUを初めて公表した際には、FY2027-2028での売上見込みは約10億ドルとされていた。つまり、AI CPU需要の見込みが倍増したことになる。これは明確な好材料である。 しかし問題がある。 同社はそれにもかかわらず売上予想を引き上げていない。その理由として、「サプライチェーンが需要に対応できるかどうか不確実性がある」ことを挙げている。 つまり、AGI CPUに対する需要は非常に強いが、供給制約により短期間での実際の出荷規模が制限されている。このため、強力な需要が実際の売上に転換されるペースが市場予想より遅れる可能性がある。これが取引終了後の下落要因かもしれない。 全体として見ると、Armの今回の決算は下流顧客によるIPライセンス需要の強さと、AGI CPUに対する強い市場需要を示した。しかし短期的には供給制約により、「需要は強いが実現が遅れている」という状況に陥っている。加えて最近の価格上昇も大きくPERも大幅に上昇しているため、市場の懸念が生じるのは当然である。 しかし核心的な成長性については問題ない。したがって一時的な調整後には良い機会となる可能性がある。



